キャラクターボイス:綾奈まりあ |
私たち兄妹が結ばれた夜から五ヶ月が経った。妊娠中期に入って、私の体型が妊婦のものに変形していくと、兄様の愛撫は硝子細工を扱うような優しさになってくる。 たとえば最近の愛撫はいつも横抱きで、膨らんだ腹を圧迫しないよう気づかってくれる。この五ヶ月で掘り尽くされた女の秘密を的確に刺激して、母体には最小の負担で最大の快楽を。挿入に至っても、私を苦しめる体位は絶対にとらない。肌は終始ゆるく触れ合わせたままで、勢いをつけた前後運動などもってのほかだ。 お腹の子もそろそろ安定期なのだから、激しくしても大丈夫だと思うのだけれど。実妹を孕ませた罪悪感を背負いつづけている兄様にとって、夫として私の心身を守ることは最後の一線らしい。 普通の女性が妊娠すれば、連れ合いを悩ませるまでもなく性交自体を止める。“普通”でない私が精神の均衡を保つには、兄様との交歓が絶対に必要だった。私が兄様にぶつける愛情は相変わらず変態的に強烈で、すべて受け止めてもらわないと発狂の危険すらある。刹那の快楽と胎児の安全、どちらが重要か本気で悩んでいる。子宮に兄様を咥えこんで、胎児ごと滅茶苦茶に掻き回してもらいたいという願望もまだ捨てきれていない。 それでも、兄様が時間をかけて満足させてくれるおかげで心の問題はずいぶん落ち着いた。つわりも治まっているし、今はただ兄様の子を産める日が待ち遠しい。子を宿すくらいに愛されて、兄様の愛を胎内で育んでいることが嬉しい。毎日が幸せでたまらない。 愛する人の子供を産むことは、性愛の原点であり極点だ。情を交わせば子供ができるのは自然の摂理だ。私にとっても、初めての契りで妊娠させてもらった悦びは性愛の原体験だった。その行為が生殖活動の意味を為さなくなった今も、私は達するたびに「兄様の精子で孕ませて」「私たちの赤ちゃんをつくって」「子宮に子種を植えつけて」などという言葉を口走っている。日に日に大きくなっていくお腹の膨らみは、形になって表れた兄様への愛情そのものだった。 最低の娼婦ですら口にしそうにない淫声をあげる私だけれど、性欲が強いわけではないと思う。私はただ、兄様に満たされたいだけだ。もどかしさに狂って変態性欲者に堕ちるのも、兄様への愛が強すぎるからだ。 両親が仲良く愛し合うのは、お腹の子供にとっても良いことだ。このままこの子を育んで、出産し、空白のできた子宮に再び兄様を受け入れて、また子供を孕む。普通の夫婦のように、人が繰り返してきた営みを続けていたい。家族はこうやって増えていく。兄様と幸せな家庭を築けたらいいと思う。 兄妹で夫婦。私たちはこれ以上ないほど“家族”だった。兄の子を産むのは妹として当然の義務だとさえ思う。 兄様と愛し合うことは気持ちいい。私は自分の幸福を否定せずに生きている。幸せでいることは、きっと正しいことだ。 |
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